湯島聖堂Yushima Seido
御茶ノ水駅にほど近い、緑豊かな史跡、湯島聖堂をご存知でしょうか。「聖堂」とはいうものの、神社でもお寺でもないこちらは儒教の始祖である孔子を祀る廟で、近代教育発祥の地として知られています。林羅山が上野忍ヶ岡の私邸に建てた孔子廟を、1690年、徳川五代将軍綱吉が儒学の振興を図るために現在の地に移したことが始まり。1797年にはここに幕府直轄の学問所、昌平坂学問所が開設されました。




明治維新を迎え新政府の所管となると大学校や文部省が置かれますが、1922年には国の史跡に指定されます。関東大震災で入徳門と水屋を残して全てが消失しますが、昭和に入って築地本願寺などを手がけた建築家、伊東忠太の設計により再建されました。現在は、再建を主導した公益財団法人斯文会により保存、管理されています。




見どころは、江戸時代の姿を今に留める木造の入徳門、殿内に孔子像を配した大成殿、「楷書」の由来ともなっている楷樹の大木、孔子の銅像など。大成殿の屋根の上には猫のような不思議な生き物の像が据え置かれていますが、これは中国の想像上の霊獣、鬼龍子。その対面にはしゃちほこのような姿の神魚、鬼犾頭が。妖怪好きとして知られる伊東忠太の嗜好が現れているようです。



湯島聖堂では4月第4日曜日に開催される孔子祭のほか、鍼灸祭、先儒祭などさまざまな伝統行事が祝われており、気軽に参加することができます。そのほか、論語、漢詩、書道、太極拳などの公開文化講座があり、誰でも受講可能。都会のオアシスで、東洋の伝統文化や学問に親しんでみてください。




2017年10月 文:倉石綾子 写真:山口靖雄