須藤公園Sudo Park
千駄木駅にほど近い須藤公園は、池と滝が織りなす風情が印象的な公園です。江戸時代、文京区界隈は江戸の郊外として市街地化されており、大名屋敷や武家屋敷が置かれていました。現在の須藤公園は、加賀金沢藩の支藩であった大聖寺藩の屋敷跡にあたります。

高台にあるこの下屋敷、かつては東京湾を隔てて房総半島の山々を望める、界隈随一の景勝地だったようです。庭園の規模はさほど大きくありませんが、高低差のある台地と低地を巧みに組み合わせた回遊式の大名庭園が造られました。

明治時代になると長州(現在の山口県)出身の政治家、品川弥二郎の邸宅となり、その後、明治22年には実業家の須藤吉右衛門に買い取られます。須藤家屋敷となった後も、この庭園は当時の大名庭園の有り様が損なわれないよう保存されていました。

一般の人々が足を運べる公園となったのは昭和8年のこと。須藤家が公園用地として東京市(当時)に寄付、昭和25年以降は文京区が管理を行っています。


敷地内には約30坪の中之島があり、ここには古くから弁財天の祠(ほこら)が置かれています。また、中央の池には高さ10mの滝から流れ落ちる水が流れ込み、夏季は涼を誘います。池にはクサガメやコイ科のモツゴ、カルガモなどが生息しており、自然観察を楽しむ散策もおすすめです。


クスノキの大木が織りなす豊かな緑に、清々しい水の流れ。東京にあることを忘れさせるような風情を醸し出す須藤公園へ、ぜひお出かけください。


2019年10月 文:倉石綾子 写真:山口靖雄