印刷博物館Printing Museum
コミュニケーション・メディアとしての印刷に焦点を当て、その文化と歴史を紹介しているのが、こちらの印刷博物館。凸版印刷の創業100周年を記念して開設された企業博物館です。

まずは「プロローグ展示ゾーン」へ。高さ7m、幅40mの巨大な壁面には、ラスコーの洞窟壁画のような印刷技術が生まれる前のコミュニケーション方法からデジタル時代の印刷までが6つのテーマに沿って展示されています。



続いて、5つのブロックに分かれる「総合展示ゾーン」へ。こちらには印刷された年代が記録に残る、世界最古の現存印刷物と謳われる奈良時代の「百万塔陀羅尼」など黎明期の印刷物、グーテンベルクによってもたらされた活版印刷の代表作「42行聖書」など貴重な資料がずらり。日本で発達した錦絵(多色摺り木版画)ができるまでを追った展示も。


博物館内には印刷工房「印刷の家」が併設されており、こちらでは活版印刷の無料体験ワークショップが開催されています。「つくるコース」では活字を拾い(文選)、版を組み(植字)、実際に印刷するといった、活版印刷の流れを体験できます。



工房内には1810年代に製作され、世界でも十数台しか残っていないというスタンホープ印刷機などの珍しい印刷機が展示されています。その奥にある、通称“馬棚”には、和文・欧文、8ポイントから24ポイントまで、何十万という活字がずらり。これらを用いてスタッフが手がけた活版の商品は、1階のミュージアムショップで販売されています。



そのほか、併設するVRシアターでは、臨場感にあふれる仮想空間を再現しながら印刷テクノロジーを活用した映像を上映しています(土、日、土日に続く祝日のみ上映)。
印刷が人類にもたらした文化を、多彩な角度で知ることができる印刷博物舘。身近にある本や雑誌がどのように作られてきたのかがわかれば、印刷が一層身近に感じられるはずです。





2018年4月 文:倉石綾子 写真:山口靖雄