怨霊座敷ONRYOU ZASHIKI
この時期になるとつい足を運びたくなるのがお化け屋敷。東京ドームシティ アトラクションズ内ラクーアゾーンにある「怨霊座敷」は、お化け屋敷プロデューサー、五味弘文さんが手がけるお化け屋敷。“靴を脱いで入る”という新感覚の演出が話題です。

舞台となるのは、暗い秘密を抱えた古い一軒家。かつてここには美しい女性、夜雨子さんが暮らしていました。夫の裏切りに遭った彼女は不遇の死を遂げますが、以来、この家には恐ろしい出来事が次々と起こるように………。


というのが「怨霊座敷」のストーリー。家に取り憑いた夜雨子さんの怨霊を鎮めるため、この家へ入る参加者には、とあるミッションが課せられます。

「怨霊座敷」の見どころを五味さんに伺いましょう。
「お化け屋敷というのは、ホラー映画や怪談と違い、自らの身体が実際の恐怖にさらされるという“体験”にポイントがあります。『怨霊座敷』では、その“体験”の密度を高めることでお化け屋敷の本質に迫っています」
「お化け屋敷というのは、ホラー映画や怪談と違い、自らの身体が実際の恐怖にさらされるという“体験”にポイントがあります。『怨霊座敷』では、その“体験”の密度を高めることでお化け屋敷の本質に迫っています」
五味さんによれば「お化け屋敷では視覚と聴覚に加え、触覚が大きな役割を果たす」と言います。「怨霊座敷」では靴を脱ぐことで足の裏が無防備にさらされるわけですが、足の裏の触感の情報が想像力をさらに刺激するようです。

現在は夏の特別演出バージョン、「怨み針の女」を開催中(9月23日まで)!「怨み針の女」では、夜雨子さんに加え、怨霊となった夜雨子さんに取り憑かれた布美子さんという女性が登場します。
「欧米の怪談は構成がシンプルですが、それに比べると日本の怪談は物語が重層的。『累ヶ淵』に代表されるような因果の重なりこそ、日本らしい恐怖の根源ではないでしょうか。『怨霊座敷』をベースにした『怨み針の女』では、2人の登場人物による重層的なストーリーで、その重なりを意識してみました」
「欧米の怪談は構成がシンプルですが、それに比べると日本の怪談は物語が重層的。『累ヶ淵』に代表されるような因果の重なりこそ、日本らしい恐怖の根源ではないでしょうか。『怨霊座敷』をベースにした『怨み針の女』では、2人の登場人物による重層的なストーリーで、その重なりを意識してみました」

ポイントは「針」と「障子」。
「柔らかいものは概して安心感を誘ってくれますが、そういうものの中に異質なものがあるとどきっとしませんか?ここでは、針という鋭いものとミッションに登場する柔らかいもの、相反する触感のものを同時に見せることで本能的な恐怖に働きかけています」
「柔らかいものは概して安心感を誘ってくれますが、そういうものの中に異質なものがあるとどきっとしませんか?ここでは、針という鋭いものとミッションに登場する柔らかいもの、相反する触感のものを同時に見せることで本能的な恐怖に働きかけています」
一方、一軒家という演出ゆえ、効果的なのが障子使い。障子の向こうには、異形の何かが……。
「簡単に壊れそうで、かつ、向こう側の気配をほのかに感じさせる障子はとても日本らしい建具ですよね。境界線が曖昧であるという点で、障子はあの世とこの世の境目を表しているとも言えますね」
「簡単に壊れそうで、かつ、向こう側の気配をほのかに感じさせる障子はとても日本らしい建具ですよね。境界線が曖昧であるという点で、障子はあの世とこの世の境目を表しているとも言えますね」

凝りに凝ったストーリーと仕掛けで異次元の恐怖を展開する、「怨霊座敷」と夏の特別演出「怨み針の女」。この夏の最恐体験をお約束します。

2019年7月 文:倉石綾子 写真:山口靖雄