東京復活大聖堂(ニコライ堂)Holy Resurrection Cathedral, Tokyo(Orthodox Church in Japan)
ニコライ堂の名前で親しまれている東京復活大聖堂は日本正教会の聖堂で、日本で唯一の本格的ネオ・ビザンチン様式の建物。1891年に建てられ、1962年には国の重要文化財に指定されました。


正教会とは、イエス・キリストの降誕、十字架上の死、そして復活に端を発する初代教会の信仰をそのまま継承してきたキリスト教会のこと。エルサレムからギリシャ、そしてロシアを経て、ロシア人宣教師ニコライ・カサートキンにより日本に伝えられました。


宣教師ニコライが来日したのは幕末の1861年。日本に正教を伝道すべくやってきたニコライですが、実際に宣教活動を始めるには明治維新まで待たねばなりませんでした。その後、苦労して資金を集め、7年の歳月をかけて現在の地に美しい聖堂を建設します。ロシア人建築家、ミハイル・シチュールポフ博士の原設計を基に、鹿鳴館などを手がけたイギリス人建築家のジョサイア・コンドル博士が実施設計を手掛けた聖堂は、中央の大きなドームが特徴的。正教会の聖堂はイスタンブールにあるアヤソフィアをモデルとしており、そのスタイルが今日まで受け継がれています。中央に柱のないこの造りは、ビザンチン・ドーム建築が発達した6世紀当時画期的なものでした。


その後、1923年に関東大震災の東京府下大火災による類焼で大ドームは焼け落ち、煉瓦壁と石組みの基礎を残して焼損したものの、ニコライの遺志を継いだセルギイ主教の尽力により修復工事がなされ、正教徒でもあった建築家の岡田信一郎設計・監修による現在のスタイルのニコライ堂が完成しました。聖堂内には中央にイコノスタシス(聖障。キリストや聖母、聖人らを描いたイコンと呼ばれる絵画を設えた衝立のこと)が据えられ、壮麗なステンドグラスや美しいイコンが厳かなムードを漂わせています。




信徒でなくとも平日13時から16時の間は拝観が可能。また、ともに祈る気持ちがあれば日曜の公祈祷に参加することもできます。駿河台のシンボルにぜひ足を運んでみてください。





2017年9月 文:倉石綾子 写真:山口靖雄