ひみつ堂Himitsu Do
「行列のできるかき氷店」として知られる、谷中のひみつ堂。人気の秘密は日光からわざわざ取り寄せる天然氷を手動で削るというふわふわの食感と、果物の酸味やうまみをそのまま閉じ込めた自家製のシロップです。



日本では平安時代からかき氷が食べられていたといい、「枕草子」でも削り氷が「あてなるもの(=上品なもの)」として紹介されています。当時から欠かせなかったのが、氷の蔵元と天然氷。蔵元では氷を作るための池に岩清水を引き、雪やホコリを取り除きながら2週間ほどかけてじっくりと凍らせ、天然氷を作ります。こうして固く締まった、ガラスのような透明感のある氷ができるのです。



職人たちが手塩にかけて作った天然氷は、昔ながらの手動式氷削機へ。繁忙期には1日1000杯を提供する人気店ゆえ、手動式は重労働ですが、「氷を削る様子もエンターテインメントとして楽しんでほしい」という思いから、手動式にこだわっています。

きめ細かな氷にかけるのは、フルーツと砂糖だけで作った自家製の蜜。200種以上のラインナップがあるというこの「氷蜜」、「西表島パイン」、「宮古島マンゴー」といったトロピカルな味わいから「甘夏アマレット」、「カルーアバナナ」などリキュールを効かせたものまで、バリエーションもさまざま。「枝豆」、「かぼちゃ」といった変わり種も。


「平日は12時台と17時台が比較的、空いています」と森西さん。行列に並んでも食べたい手作りかき氷があれば、ジメジメとした梅雨も暑い夏も、楽しく乗り切れそう。



2018年5月 文:倉石綾子 写真:山口靖雄